
8.2.3 プロセスの測定及びモニタリング
企業は、収益率、スクラップ率、再加工率のような企業の財務的影響が比較的大きいものには経営者や管理職が規格で言われるまでもなく管理している。しかし、営業部門から出荷・配送部門までの個々のプロセスの管理状況を把握するまでに発展させている企業は少ない。特に、日本では効率だけを追求する財務畑出身の経営者が「現場」を知ることなく効率のみに眼を向けている傾向が強いように見える。規格は、顧客の視点から重要な納期の厳守、間違いのない請求書のタイミングのよい発行、コストと時期を得た開発の完成など企業内でのあらゆるプロセスをモニタリングできるように、パラメーターを定めることを要求している。
したがって、顧客要求事項の明確化から製品の引き渡しに亘る製品の具現化プロセス全般を対象とすることに留意しなくてならない。この要求内容は以下の概念を反映している。製品やサービスは、プロセスの結果であるから、プロセスが正常に運営されなくては最終的な製品やサービスのクオリティは維持・改善できないという意図が明確となった。
「数値で自社のプロセスを説明できない企業は、自社のプロセスを理解することはできない。そして自社のプロセスを理解できないならば、それらを管理することはできないのだ。その会社の根本的な経済状態に関係するプロセスをメトリックスで測定することが、品質を改善し、顧客満足を増大させる唯一の方法なのでる。」(シックスシグマ・ブレークスルー戦略)
購買部門や出荷部門など間接部門のプロセスを特定した指数で測定し、それらのプロセスが顧客要求のためにいかに管理された状態で運営されているかをモニタリングすることになる。これらのモニタリング結果は、継続的改善の計画作成に利用されることになる。
プロセスを測定するパラメーターをISO9004で例示しているから参照すること。理解を助けるためにもっと具体的な事例を挙げると以下のようになる。
・図面や発注書への誤記件数
・納期遅れ日数のような顧客苦情に直接関わること以外にも設備の日常管理の遅れ日数
・設計開発部門では予測年月と予算に対する実績との対比
・営業事務担当者の一顧客当たり応答時間、あるいは銀行や役所における待ち時間
特に、「サイクルタイム」の概念を利用するならば、サービス業や事務部門と言えどもプロセス・パラメーターを設定することは容易である。たとえば、
・病院での書類への記入、患者の診察記録の検索、血液検査、レントゲン撮影などの総時間
・顧客の注文書の数値と財務部の作成した代金請求書での数値の差異による代金の回収遅れ
現在、日本では企業業績への貢献度並びに顧客満足充足と観点から事務部門の不効率さが話題になっているが、規格はこれらにも焦点があてられたと言える。
規格の7.1項「製品実現プロセスの計画」で明らかにしたすべてのプロセスに対して一つないしは複数のパラメーターを策定する。たとえば、購買部門の発注書作成グループならば、発注書の誤記件数などである。できれば、これの過去2年間の数値を用いてX-R管理図を作成する。当然、この管理図には「ばらつき」を表すシグマを計算している。過去の結果がなければ、新たに作ることになる。新規格への対応のためにどの程度業務プロセスを細分化することが問題になる場合があろう。部門別程度からはじめ、データの作成になれてくれば徐々に拡大していくことをアドバイスしたい。
このパラメーターを策定する場合、自部門の「顧客」は誰かを明らかにしないと単なるデータ取りの行為になることに注意する必要がある。上記の発注書の場合なら、納入業者や下請け企業だけでなく、請求書を受け送金する会計部門も顧客となる。なぜならば、発注書の誤記による請求金額の間違いを訂正するために発生する会計部門の「品質ロス」が製品の価格に見えない影響を与えることがあるからだ。このような観点で、企業のすべてのプロセスを管理できる状況を作ることがコストの低減につながり、最終的には顧客満足に貢献することを認識することが肝要である。
規格文言では何らの言及はなされていないが、統計的手法の適用が暗示されている。プロセスの測定とモニタリングには統計的手法が用いられることは一般であるから理解は容易であろう。X-R管理図は、その一例にすぎない。

