品質マネジメント・システムー要求事項
4 品質マネジメント・システム
4.1 全般的に求められる事柄
品質マネジメント・システムでは基本的な分野に焦点を合わせ、システムに対する最終的な責任が誰にあるかを考える必要がある。さらに、どのような経営資源が求められているかをよく見定めて、主要な業務のプロセスとその成果をいかにして測定するのかを明らかにし、望ましい結果が得られるように措置を講じることである。
「この条項は品質マネジメントの8つの原則を基盤にした品質マネジメント・システムの全貌と基本的な概念を記述している非常に重要な要求事項である。プロセス志向で業務をコントロールし、企業を一つのシステムとして運営し、継続的改善を通じて業務プロセスの変革を行えば企業業績を向上させることができることは多くの企業で証明されている。ただし、このような品質マネジメント・システムの効能を信じてどの程度深く実行するかは企業の選択に任されている。国際規格では、どの程度、すなわち「How 」は一切ふれていない。自社の規模、製品の種類、顧客の特性、社員の能力、企業の成熟度などによって決めることになる。」(新規格の新しい本の未発表原稿より)
4.2 文書化
4.2.1 一般
品質方針、品質マニュアル、および品質目標を文書化することが求まられる。特に注意しなければならない点は。業務の手順、計画の作成、作業の運営である。これらの点でクオリティを管理するために何をするのかを記述する必要がある。また、品質記録を残すことも必要となる。これには手順を守って作業が行われたことを証明する文書はどれかを決めることになる。例えば、マネジメントレビューの議事録、顧客の苦情とその処置、内部監査結果などである。
文書化に関して、形式だとか文書の多さは何らの要求はなされていない。企業の規模、企業活動の種類、業務の複雑さによって一つ一つ違ってくる。
4.2.2 品質マニュアル
品質マニュアルでは、品質マネジメント・システムは何をどう処理するのかを記述することになる。すべてのクオリティに関する手順を明確にするか、あるいは何を参照すればよいかを決める。そこで、品質マネジメント・システムと業務の手順とがどう関わっているか、期待した結果を達成するために何を行うか、誰に責任があるかを文書にすることになる。
4.2.3 文書の管理
文書を適切に管理するとは、品質マネジメント・システムに関連するすべての文書が明瞭になっていること、レビューされていること、承認を受けていること、発行・配布されていることを意味する。そのためには、旧版で無効になっている文書が使われないこと、参照文書として決まられているならば厳格に保管されることに留意する必要がある。また、品質マネジメント・システムで用いられている外部文書は何かもシステムの中で明らかにされ、これらの文書にアクセスする時の管理方法も求められる。
4.2.4 品質記録の管理
品質マネジメント・システムが正しく運営されていることを証明する文書は、明瞭ですぐに取り出せる必要がある。また、いま有効である文書とすでに無効になっている文書の両方をきちんと決める方策をもつことも必要である。
経営者の責任
5 経営者の責任
5.1 経営者のコミットメント
クオリティ向上活動を効果的に実践するには、企業のトップマネジメントが深く関与し、堅い決意の表明(コミットメント)がなされなくては成功しない。したがって、品質マネジメント・システムの構築を監督する責任をトップマネジメントに与えることから新規格は始まる。さらに、すべての利害関係者とのコミュニケーション、品質マネジメント・システムの運営に欠かせない経営資源の提供、品質マネジメント・システムが計画通り確実に運営されていることをレビューする責任も求められている。
5.2 顧客重視
トップマネジメントは、顧客が求めている製品並びにサービス面でのクオリティを明確にし、品質マネジメント・システムがこれらの要求を満たすことができるように機能させる。品質マネジメント・システムの目指す目標は、顧客の満足を向上させることでなければならない。
「最終的に正式になった規格では顧客の要求内容(Customer requirements)であるが、規格が決まる寸前までは【顧客のニーズと期待】であった。これを考慮に入れると、単に顧客が求める製品やサービスの内容を決定することとその実現だけでは顧客満足の向上は困難だという認識が必要になる。なぜならば顧客のニーズや期待は常に変化し、しかもその変化のスピードが速くなっているのが現状であるからだ。ならば、何らかの工作が必要になろう。規格は、その仕組みを【7.2.1項 製品に関連する要求事項の明確化】とともに【8.2.1項 顧客満足】で提示している。さらに、顧客のニーズと期待を把握する手段として【7.2.3項 顧客とのコミュニケーション】に含まれる「顧客が明示していない要求事項」や「製品の苦情」も考慮に入れることが必要になる。これで分かるように顧客志向のマネジメントが実行できるような仕組みが規格にはめ込まれているとも言える。」(新規格の新しい本の未発表原稿より)
5.3 品質方針
品質方針は、品質マネジメント・システムの主なる目的を明確にし、企業が何故にこの品質方針を採用するのかの事由を説明することになる。品質方針は、企業の広範な目的を単純化した文言で表現されることもあり、時にはもっと詳細な文書を作成し企業目的と共に、ISO9000規格で求められている業務分野での果たさなければならない責任を明らかにすることもある。規格に適合していると判断される品質方針とは、当然ながら各企業の目的に対して適切であり、しかも企業内全体に伝達され、その適切さはレビューされ、品質マネジメント・システムの効果を改善するために切磋琢磨し。顧客の要求を満たすことを目指した内容でなければならない。
5.4 計画
5.4.1 品質目標
品質方針との整合性がとれた計測可能な品質目標を策定し、組織全体に伝達すること。全社目標を受けて組織内の部門・レベルでの目標に展開すること。
5.4.2 品質マネジメント・システムの計画
品質目標を達成するための行動計画を策定すること。さらに品質方針を達成する上で有効に機能するように品質マネジメント・システムそのものを継続的に改善し、顧客満足を向上できるようにする。マネジメント・レビューを通じて品質マネジメント・システムの一部をを変更するときには、システムのエレメントの個々で整合性がなくならないように完全性を保つこと。
「新規格の【品質マネジメント・システムの計画】とは、システム・レベルの計画を意図した新しい規定である。JISの解説によると、「品質マネジメント・システムの計画プロセスをもつという新たな規定である」としている。いずれにしても、条項4.1の一般要求事項を満たすための主要な業務プロセスを明確にして、その運営基準やモニタリングを行うことを定めた品質マニュアルが構築されれば計画の作成は完了し、後は維持管理をすればすむことになる。となると残るは、品質目標の達成のための計画だけである。この計画の内容についての助言は、ISO9004にある。
・組織に必要な技量と知識
・プロセス改善計画を実施するための責任と権限
・財務やインフラストラクチャーのような経営資源
・組織の業績向上達成を評価する基準
・手法やツールを含む改善のための必要性
社員の能力や知識のレベル向上を図る、業務プロセスの改善プロジェクト実施、社員の能力開発のための教育プログラムの作成と投資費用、一人当たり生産性の向上、これらを実行するために必要な統計的手法の教育など経営計画そのものが浮かび上がるような内容が並び立てられていることが分かろう。」(新規格の新しい本の未発表原稿より)
5.5 責任、権限、およびコミュニケーション
5.5.1 責任と権限
すべての人々がどのような責任を有し、誰に報告するのかを認識している状況を作るには効果的なコミュニケーションと適切なマネージメントが行われる必要がある。このためには部門の責任は何かとどの程度の権限委譲を行うかを品質マネジメント・システムの中で明らかにすることが重要となる。責任部門が何か変革を行うとすると権限を持っていないということがあるが、権限を委譲してこのような状況を無くす必要がある。
5.5.2 経営者の代行(管理責任者)
品質マネジメント・システムの運営上の責任を有する者を誰かに任命する必要がある。この個人を経営者の代行と云う。原文はManagement Representativeであってより広い責任と権限を有し、JISの管理責任者とはやや意味が違う。品質マネジメント・システムに関連する経営者の代行の責務には、品質マネジメント・システムに求められるプロセスを確立し、実施し、維持すること、さらに品質マネジメント・システムの成果と必要な改善を報告し、部門を越えて組織全体を通じて顧客の要求や要望に対する認識を高めることが含まれる。このためには、次項に続く要求事項である効果的な内部コミュニケーションを積極的に実施し、マネジメント・レビューの主導的な役割を担う重大な責任がある。
5.5.3 内部コミュニケーション
マネジメントと社員とのコミュニケーションを効果的に行うためのシステムもしくはプログラムを設立することが求められている。自社の品質マネジメント・システムとその目的は何か、そして達成しなくてなならないことや今解決しなくてはならない問題は何かを明確にし、議論するすることがコミュニケーションの対象になる事柄である。もちろんであるが、社員からマネージメントへのフィードバックが許されるシステムが必要となる。
5.6 マネジメント・レビュー
5.6.1 一般
すでに述べたように、トップマネジメントは品質マネジメント・システムが効果的に運営されることに対して責任がある。残念ながら現時点でベストとされる運営方法は見あたらず、ただ「モニターする」ことしかない。したがって、企業の目標が達成されることを確実にするには品質マネジメント・システムをレビューし、それを改善する何らかの方法を見つけだすことをトップマネジメント自らが実践する必要がある。レビューを何時行ったか、何が議論されたかを示す議事録を残すことが必要である。
5.6.2 レビューのインプット
マネジメント・レビュー会議はスケジュールに基づいて定期的に開催する。会議で以下の事柄が討議できるようにインプット情報を準備すること。
ー内部品質監査の結果
ー顧客からのフィードバック
ープロセスや製品の品質がどのような傾向を示しているか
ー前回の会議で明らかになった問題点
ー前回の会議でフォローアップすることに決まった案件
ー品質に影響を与える可能性のあるプロセスあるいは製品の変更の要否
ー品質マネージメント・システムの運営、社員からのフィードバック、あるいは前回の会議を通じて分かってきた改善点は何か
5.6.3 レビューのアウトプット
品質マネジメント・システムの効果を改善できるとトップマネジメントが会議の結果の一つとして決定したならば、そのためにとられなくてなならないフォローアップ活動は何かを明らかにすること。すなわち、この改善活動によって顧客の要求をより満たすことができるか、品質マネジメント・システムを強化するために必要となる経営資源は何かを決めることでもある。
6 経営資源の運用管理
6.1 経営資源の提供
企業は、品質マネジメント・システムの目指す目標が確実に満たされるようにする責務を有する。ところが、品質マネジメント・システムが「絵に描いたぼた餅」だけでそれを運営するために必要となる充分な経営資源を経営者が提供しなければ、企業の目標を成功裏に全うさせることはできない。品質マネジメント・システムの運営や維持管理に必要な経営資源だけでなく、継続的改善を実行し、顧客満足を向上されるための経営資源も必要となる。
6.2 人的資源
6.2.1 一般
企業の従業員達の技能と能力を評価することが求められ、従業員がすでに受けている教育、トレーニング、さらに経験を考慮して従業員の能力を測ることが必要である。その上で、従業員が品質マネジメント・システムに関わっている業務を実行する技能と能力を持っているかどうかを判断すべきである。
英語のCompetencyとは、どの部門に行っても必要とされるような普遍的な業務達成能力のことであり、コミュニケーション能力やリーダーシップなどを指す。一方、スキルとは業務に直結する技能、技術、資格。つまりそれぞれの部門や職場での業務を遂行する上で必要とされる具体的で限定的な能力のこと。
6.2.2 能力、認識・自覚、トレーニング
従業員が業務を効果的に実行できるように充分なトレーニングが行われているかどうかを見極めることは、企業の責務である。この責務を果たすには、必要とされる技能に不足する従業員にはトレーニングを行い、現在在職している従業員に新しい技能を付けさせるための教育訓練プログラムを策定すること求められる。もちろん、必要とならば技能面ですぐれ能力のある要員を外部から雇用することでも補える。
6.3 インフラストラクチャー
品質マネジメント・システムに於けるインフラストラクチャーには、製品あるいはサービスを作り出すことに関わる職場、設備並びに支援サービスが含まれる。企業は、計画された目標を達成するために必要となるインフラストラクチャーを明らかにし、提供し、維持管理することが求められる。
6.4 作業環境
品質面での期待された目標を満たすために従業員の力が発揮できるような作業環境を整えることが必要である。良き作業環境とは、従業員が創造性を発揮でき、清潔で、適切な安全規則と設備があり、人間工学的な配慮がなされ、空気・水などの汚染が管理され、容易く他の職場と接触できることなどである。
7 製品の実現
7.1 製品実現の計画作成
製品の実現とは、物品もしくはサービスの受注からその出荷までのステップとプロセスを対象とする。品質マネージメント・システムでは、顧客との折衝から始まり最終的な納入までの複雑な取り組みを整理整頓し、集大成されることが求められる。自社のみならず供給者を含めた手段やステップをまとめあげるだけでなく、重要な手段やステップを文書化する必要がある。すなわち、顧客の要求事項をふまえて、いかに製品やサービスを顧客に納入ないしは提供するかの企業業務のアウトラインを明らかにすることが求まられているが、次項の要求事項にしたがえば自然に明確化したことになる。ただし、プロセス志向の業務運営では、部門にこだわらない顧客価値創造のプロセス連鎖が暗黙に求められていることに留意すべきである。
7.2 顧客関連のプロセス
7.2.1 製品に関連する要求事項の決定
製品に関連する要求事項は顧客から伝えられることが一般的かもしれないが、法令によって強制されることや業界で一般的に受け入れられた規格である場合もある。顧客の要求事項をいかにして決定するのかについていまのプロセスを自ら評価することが必要となる。販売部門がいま行っている契約書や口頭での取り決め方を手始めに見直せばよいだろう。契約書を改訂する必要はないかも再考する必要があるかもしれない。
7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
製品またはサービスの要求事項は何かを決めた後、これらを確実に満たしていることレビューすることが求められる。このレビューを実行するためのロジカルな考えの流れは、1)要求事項が明確化された、2)自社はこれらの要求事項を満たす能力を有している、3)プロセスもしくは生産上の変更があれがレビューされ文書に残す、ということになる。
7.2.3 顧客とのコミュニケーション
効果のある品質マネージメント・システムとは顧客とのコミュニケーションに対して適切に対処できるものである。この仕組みによって、製品の見積り依頼、契約交渉の状況、発注の仕方などの情報を顧客がいつでも使えたり持っているようにできる。もちろんであるが、顧客がフィードバックしたり、苦情を表明できることになっている。顧客とのコミュニケーションは、以下の設計開発の計画のための情報を提供するつながりがある。このように規格には、一定の前後関係がある。
7.3.1 設計・開発の計画
設計・開発のプロセスを効果的に計画するためには、まずプロセスに関わる段階を明瞭に定めることが求められる。この段階が定められたならば、これらの段階各々に対する責任を有する部署を明らかにすること。最後にこれらの責任が効果的に実行されたかをレビューする必要がある。
7.3.2 設計・開発のインプット
ある製品あるいはサービスを適切に設計・開発するためには、あらゆるファクターをインプットとして考慮する必要がある。製品あるいはサービスが顧客に受け入れられるかに対峙することも当然必要となる。しかしながら、品質マネージメント・システムで配慮しなければならないもっとも重要なことは、性能、法令と規制、そして企業の規範的な行動のようなその他の要求事項である。
7.3.3 設計・開発のアウトプット
設計・開発のアウトプットとしては、インプットの文書で指定された要求事項が設計された製品によって満たされていることを示すための十分な情報があることが求められる。しかも潜在的なリスクがいかに緩和されているかも含まれるべきである。さらに、生産の過程で必要となる仕様、購買、検査・試験、記録、文書化など製品がいかに作られるについての情報、トレーニングの必要性、使用者と顧客の情報も入る。これらのプロセスは記録され承認される必要がある。
7.3.4 設計・開発のレビュー
設計・開発の要求内容が何かが決まれば、これら正しいかどうかのレビューを行う必要がある。このレビューには設計・開発に関わる社員が参加すべきである。彼らは設計・開発のプロセスが正しいことを決定するためにレビューを行うとともに問題点を指摘しその解決策を提案する役割をもつ。設計・開発のレビューは記録されること。
7.3.5 設計・開発の検証
設計・開発のプロセスの計画とレビューが終われば、出来上がったアウトプットが設計・開発のインプットを満たしていることを確かめるために試験や検証を実行する必要がある。この検証のための手段はいろいろ考えられるが各自の事情を勘案して実行できる最善のものを採用すればよい。試験結果は記録として残し、もしさらに何かを行う必要があれば、その内容を決めて記録する。
7.3.6 設計・開発の妥当性確認
設計・開発の検証が終了すれば、実際に使用される条件下で妥当性確認が行われる。もしも製品が複数の違った使い方をされるならば、各々の使用条件で妥当性を確認することになる。設計・開発のアウトプットとして決定された妥当性確認の手段に従うことはもちろんである。自動車の実車テス、試験的販売の結果、食品の試食テスト、建造物の施主検査などがある。可能な場合、新製品や新しいサービスの妥当性確認は顧客に製品を引き渡す前に行われなればならない。
7.3.7 設計・開発の変更
はじめての設計では顧客の注文内容を受け入れるために変更されることはしばしば起こることである。設計変更は、性能を上げるためとか、インプット条件が変わったとか、その他妥当な理由によって起こることも大いにあり得ることである。規格は、これらの機能的な変更を明確にし文書化することを求めている。また、製品を設置したりサービスを提供したりする前に変更を分析し、変更が与える影響にはどのようなことがあるのかを考慮することも要求している。これらの分析結果を記録し、もしさらに何かを行う必要があれば、その内容を決めて記録すること。
7.4 購買
7.4.1 購買のプロセス
供給者と取引をするために管理されたプロセスを持つ必要がある。購買グループには購買先をいかに評価し、選定するかの基準を定めること求められる。発注した仕様を満たすことができるかどうかの供給者の能力に基づく基準であるべきである。購買品が指定した仕様を満たすことが確実に行われるための手順が必要となろう。最後に、購買品がいかに評価され、問題を見つけたときに何を行ったかを示す記録を維持管理しなければならない。
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7.4.2 購買情報
購買情報とは購入されるべき製品を記述したものであり、契約、発注書、その他の文書を含まれることになる。購買情報が要求条件を満たしていることが確実にできるように品質マネージメント・システムの中に策定し、何時どのような承認が求められるかを定めるべきである。また、購買情報が指定した要求事項に適合するように特別の条件を記述することも必要となることもある。
7.4.3 購買品の検証
あくまで適用できる場面で必要な時に限定されるが、購買品の検証のための手順を定めることが求められることもある。発注した製品やサービスが事前に決められた仕様を満たしていることを確かめるためのある程度のテストをする必要がある。これらのテスト結果を文書化する必要がある場合もある。
7.5 生産およびサービス提供
7.5.1 生産とサービス提供の管理
生産活動と計画作成は管理された環境で実行されるべきである。管理された環境とは、従業員がいかに作業をするか、製品を組立てたりサービスを提供するために必要となるすべての装置をいかに使用するのかが分かるように指示書が使えたり整備されていることを意味する。製品の要求事項が開発される時点から製品もしくはサービスが引き渡される時点までの一連の課程を通じてこの管理された環境が存在していることが求められる。また、このような管理された環境を示す文書は、「品質計画書」と称されることもある。
7.5.2 生産およびサービス提供のプロセス妥当性確認
妥当性確認とは、プロセスを適切に適用することよって計画された結果を達成できることを明示できることを意味する。モニタリングや測定によって最終製品やサービスを検証することが不可能な場合には、品質マネージメント・システムでそれを妥当性確認と定義するべきである。製品が使用されたりサービスが提供し終わるまで欠陥が特定できない時には、この妥当性確認は特に重要である。妥当性確認が適用できる場合には、プロセスの中でも次の領域に対して基準を明らかにすべきである。すなわち、妥当性確認の手順と装置の承認、従業員の資格、もし妥当性がなくなった場合にしなければならないこと。1994年版での特殊工程と同等であり、サービス業で多用できるだけでなく製造業でも利用できることが多い。
7.5.3 識別およびトレーサビリティ
ある製品がテストされるかあるいは測定される場合には、生産サイクルのどのようなポイントで製品は識別されなければならない。この識別は、トレーサビリティのために、もしくは物理的にかつ文書で生産プロセスの全体で製品を追跡できる能力を示すことに使われる。
7.5.4 顧客の所有物
顧客が彼らの所有物を使用させるため、あるいは製品に組み入れるために企業に提供する場合には、特別な取り扱いをする必要がある。提供された顧客の所有物を識別し保護することが求められることもある。また顧客の所有物を紛失したり、それが損傷を受けたり、あるいはそれが不適切であるならば記録を維持管理しなければならない。
7.5.5 製品の保存
企業が製品および部品の取り扱い、保管、包装、保存、納入のための手順を維持管理することを規格が要求している。
7.6 モニタリングおよび測定機器の管理
効果的な品質マネージメント・システムで中心的な役割を果たすのはモニタリングとテスト機器であることが多い。この事実によって、規格はこれらの機器を注意深く管理、維持することを強調している。適切なモニタリングと測定の手段が計画された結果を達成するために用いられていることを定めた手順を確立させることが求められている。許容される基準にしたがってモニタリングと測定が実行されるためのプロセスが隔離されるべきである。モニタリングもしくは測定機器は損傷や予期できない調整が行われないように保護されること。モニタリングと測定結果は維持管理され評価されなければならない。機器が適切に校正されていないことを示す結果が得られたならば、修復のために行われたアクションは文書化されること。
8 測定、分析および改善
8.1 一般
品質マネージメント・システムの効果が改善されていることを確かめるために何らかのモニタリングと測定手法を開発する必要があろう。品質マネージメント・システムが効果を発揮していることを示す最終的な結果は顧客満足の向上であるから、次項の顧客満足の測定でもよい。しかし、顧客満足だけでなく製品の適合性や生産性などもモニタリングすることも必要な企業もあろう。
8.2.1 顧客満足
品質マネージメント・システムの目標の一つは顧客要求を充足することであるから、製品やサービスに対する顧客満足をいかに測定するかを定めることが求められている。
8.2.2 内部監査
内部監査は、要求されている手順が守られているかを確かめるために企業の従業員によって実施されるダブルチェックである。品質マネージメント・システムで網羅されている個々の分野について内部監査を実施することを規格は要求している。監査を実施するに当たっては次のことを決めることが必要になる。すなわち、どの分野がテストされねばならないか、どの程度詳しく調べるか、インタビューなのか文書をレビューするのかのような監査の手法をどうするか、監査を実施する責任を誰に与えるか。監査の結果は記録として維持管理されること。また、監査の手順は文書化されねばならない。
8.2.3 プロセスのモニタリングと測定
規格は、企業の種々のプロセスが望ましい結果を生んでいるかを測定することを要求している。規格条項4.1で規定されているように生産に関連するプロセスだけでなく営業や設計・開発など製品の実現プロセス全体が対象となる。もしも計画された結果が達成できなかった場合には是正処置を講じるべきであるし、そのプロセスの効果を再検討するべきである。
8.2.4 製品のモニタリングと測定
生産プロセスでは、製品の要求事項が満たされていることを確かめるために製品の測定とモニタリングを行う必要がある。これを満たすには、製品が合否判定基準を満たしていることを確かめること、製品が引き渡される前にレビューされること、製品を顧客に引き渡すことを承認するのは誰かが決められることを文書化する必要もあろう。
8.3 不適合製品の管理
不適合製品とは、測定結果が要求事項に達していないいかなる製品あるいはサービスをいう。不適合製品は生産プロセスのいかなる場所でも見つけ出されることがある。たとえば、原材料の受け取り時、最終製品の監査時、あるいはこの二つの時点の間にあるいかなる場所である。不適合製品の管理、識別、使用の防止のための手順を文書化するが要求されている。できる範囲でよいが、不適合製品を除外ないしは修正するためのアクションを実行して不適合製品を管理することが求められている。また、顧客の同意を受けることで不適合製品を引き渡すことも許容される。これらのプロセスを文書化し、不適合製品に取られた処置は記録として維持管理されねばならない。
8.4 データの分析
品質マネージメント・システムが機能していることを示す情報を収集すること、並びにシステムの効果と効率を評価するために収集されたデータを分析することを規格は要求している。収集され分析される情報には、品質目標にかかわる情報を含めること。規格で述べられているように、これらの目標は顧客の要求事項を満たしていることと品質マネージメント・システムが継続的に改善されていることである。特に評価されるべきこととしては、供給者の実績である。プロセスと製品の特性を管理するために適切である場合には、統計的手法を用いるべきである。データの分析結果は、次項の継続的改善に使われる。
8.5 改善
8.5.1 継続的改善
継続的改善がいかに重要であるかを強調するために、品質マネージメント・システムが継続的に改善されていることを達成目標とするように再び規格は繰り返している。新規格は、次項の是正処置や予防処置よりも継続的改善を強化していることに気づくべきである。なぜならば、是正処置では影響に見合った処置でよく、予防処置では必要性を評価してだから必要がなければ何も行うことはないからだ。
8.5.2 是正処置
企業の品質マネジメント・システムにかかわる問題を是正するために講じられたアクションを記述した文書は、是正処置要求書とよばれ、管理文書として扱われる。品質マネジメント・システムが規格の要求事項に到達できていない場合これを「不適合」となる。もっと易しい表現するならば、最終製品やサービスを生産している過程で発生した問題が不適合として扱われる。効果的な是正処置には、問題を明確にし、根本原因を摘出し、再発防止策としての試みを計画し、この試みの効果を評価することを行う。これらすべてを文書化することが求められている。
8.5.3 予防処置
是正処置として速やかに処置を講じるとともに、問題としてまだ発生していないことについても対処する必要がある。すなわち、予防処置である。効果的な予防処置には、潜在的な問題を明らかにし、根本原因を究明し、再発を防止する措置を講じ、その措置の効果を評価することが求められる。これらのすべては文書化されるべきである。
以上