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標準化が苦手の日本企業

 一昔前、「世界標準」と言う言葉が新聞広告や書籍など至るところで最近盛んに使われていた。そのことが気にはなっていていたが、はやり言葉として何となく使われているのではないようだ。TQCが普及したにもかかわらず日本企業は「標準化」が苦手なのだと知ったのは、「世界標準で企業がよみがえる」(西島 洋一著)を読んだ時だ。また、これから紹介する文章は、常々私がいろいろな方に話をしている内容にほとんど同じだと分かった。そして、「世の中には同じ考え方をもっている方もいるのだなー。」と感嘆した。

「ISO経営システムを社内に取り入れるに当たって考えておかねばならないのは、「標準化」がまだ日本に十分根付いていないということであろう。ISO経営システムは、その発想が西欧的な経営手法であり、従来の日本の流儀とは異なる。明治維新以来日本は欧米から一斉に技術や制度を導入したが、筆者の理解では、欧米的な思考方法や論理的組み立て方は学ばなかった。日本的思考方法の典型である腹芸は、国際的に通用しない。」 「日本では論理性のある言動が必ずしも歓迎されない気風がある。ディベートをやれば感情的になり喧嘩になってしまう。論理的で実務的に処置されるべき内容に対しても、情緒的であり、はっきりさせない風習がある。『堅いことを言うな』とか『まあまあ』で議論を打ち切り、曖昧なまま放置し、あとあとまで問題を残すことが多い。その辺りを指して、日本は不可解だと言われるのである。」

 「標準化は、趣旨、目的、対象範囲、用語の定義、構成をどうするかに始まる。日本になかなかなじみにくい監査の概念も含まれている。国際標準ではこれらの問題が全面に出てくるから、書かれている内容を理解し、実施するには、相当の努力を要する。21世紀のボーダレス化の社会においては、この国際標準化に対する消化能力と創造能力いかんに、国、産業および企業の競争力がかかっていると言えよう。ISO経営システムをどれぐらい受け入れたかが、国際化が進んでいるかどうかの尺度と考えることができるだろう。21世紀の新しい時代に合致した形に、従来の日本の流儀を衣替えする必要があるのである。」 「ところで、ISOはみんながやるからやる、認証だけを取っておけば事足れりとする、お茶を濁すかたちに終わっている場合が多いように聞く。しかし、それでは中途半端であり経営システム革新には至らず、むしろ経営資源の浪費になってしまうおそれがある。いずれも最初は難問奇問の類として映るかもしれない。しかし、品質・環境・安全の各経営システム整備は、経営システム全体の見直しに連携し、これをうまく成し遂げるか否かは企業経営の存続に係わる問題なのである。」

 西島氏の論点からは、ISO経営システムを取り入れれば企業の安泰に繋がるような意味合いにもとれるが、私は、そうではないと考える。ISO経営システムは、欧米風合理性を日本企業が取り入れるための単なる第一歩にしかないとするが私の主張である。欧米流儀の経営手法は、「日本経営品質賞」のフレームワークを実践するしかない。とは言え、従来の日本式経営から180度回転させるには、困難が伴う。そのことを一番認識しているのは、政府の関係者と世界に市場を求める大企業である。事実、通産省や建設省など日本政府機関の施策をみれば、日本企業の体質を世界標準に対応させるために、「欧米風経営システムを取り入れるには、ISO規格から入りなさい」と言っている風に見える。先週訪れた会社社長は、「黒船が来たようなものだ。」と語っていた。

標準化とアウトソーシング

 最近日本では業務を外部に委託するアウトソーシングが大はやりで、遅れてはならじと、アウトソーシングできる業務はないかと真剣に考える経営者が多いと聞く。ところが、自社の業務を社員に任せきっりだから、どの業務がどのように進められているを知らない経営者は、何をアウトソーシングできるかの判断に苦しむことになる。そんな背景があるからかアウトソーシングを目論んでISO 9000品質システムの導入を考える経営者もいる。品質システムは、業務の文書化、すなわち「マニュアル化」ができるからと言うのが彼らのロジックである。確かに、業務の文書化によって仕事のバラツキを低減できることはあるだろうが、ISO 9000規格が求めている本来の意図では決してない。端的に言えば、「文書化」は「標準化」と同位であるとの誤解である。ISO 9000では、業務を標準化しなさいという要求は一切されていない。ではなく、企業業務全体を一つのシステムとしてとらえ、システム全体を過不足なく運営する経営者の責任を問うだけである。

 とはいえアウトソーシングの利用を決して否定するのではなく、むしろ積極的に行うことを推奨したい。しかし、その目的は、標準化とアウトソーシングの関係とは全く異なる。すなわち、外部資源(アウトソーシング)を活用し、組織の変革と同時に、従業員の従来型意識を変える力を得ることを目標とすることである。ここ数年で明確になってきたことは、過去の経験だけでは判断できない事象が起こっている。それは情報伝達である。企業情報を大きな資産として社内にかかえれば利益につながった時代は終焉しつつある。今日までえんえんと築いてきた企業内情報やノウハウは、あっと言う間に陳腐化してしまうのが今日である。といって、また新しく自社内要員によってのみで情報・ノウハウを蓄えたり、収集するには時間がかかりすぎる。だから、外部資源の利用が重要となる。特に、企業のしくみそのものを変革・評価することは、社内要員では不十分だ。ISO規格に定められた第三者監査は、企業全体の経営システムを診断する有効な手段である。これもアウトソーシングと言える。自己判断だけで「うちではこうだ。」という時代は終わったと言いたい。

宣伝広告のためになる

 同業他社に差をつけて、自社の製品をお客さまに買ってもらうためには、中小企業と言えども製品品質をよくするだけでなく、知名度やイメージを高めようとなんらかの方法を講じている。ISO9000認証の取得は顧客からの信用度を高くすることは誰にでも理解出来ると思う。それだけではなく、ISO9000の認証を取得すると銀行からの融資が受けやすくなったとか、低い金利で融資してくれたなどはよく聞いたことである。しかも、取得会社ともなれば、外部から見学したいとの依頼もあったことがある。こうなると、一気に社会的な知名度を高めることに成功したことなり、従業員のモラールも向上させることもできる。ただこれだけのために取得することは、あとで後悔することになる。なぜなら、取得後、大体一年ごとに監査機関による定期監査があり、あまりにも品質マネジメントシステムの実施状況が悪ければ、認証はキャンセルされる仕組みがあるからだ。しかも、無視できない経費がかかる。悪質な監査機関もあるので、それによる被害も出ている。

全員参加の意識向上に役立つ

 中小企業の経営者には、多くの苦労を経て今日の会社にしたという意識を強く出し、全員を掌握しようする人がいる。昔の苦労をしっている従業員は理解し、指示に従うかもしれないが、そんなことを知らない従業員はそっぽを向かないともかぎらない。このような従業員に愛社精神を植え付けるのに便利な仕組みがISO9001にある。教育の重要性を打ち出していることである。このシステムは、日本人がよく口にする言葉、「マニュアル」、すなわち手順書でなにもかも縛るのではなく、教育によって仕事の仕方を従業員に教え、十分な能力や技能を身につけた人に資格認定をあたえることができるとしている。この資格認定は特殊工程に従事する人に与えるのが通常だが、この手段を上手に使うのが得策である。何故なら、規格では、特殊工程に従事する人以外に与えてはならないとは決して言っていないからだ。しかも、この制度を上手に作ると、作業工程の手順書も作らなくてもよいケースも考えられる。

 このことでいつも感じることを述べたい。それは、日本の経営者はもっと従業員を上手にほめる方法を学ぶべきだと思う。ほんのつまらないことでも立派な表彰状やトロフィーを従業員に贈与して、その功を労うことをしているのを経験したのは、アメリカの研究所とシンガポール工場に勤務していたときである。特に、現場での作業員は、このように表彰してもらうと仕事への愛着心を強める効果は大きいと知った。だから、わずかな費用で効果的な表彰制度をぜひ採用されることを推奨する。たとえば、ISO9001認証取得を記念にして、仕事の品質改善に大きな貢献をした従業員に「ISO9001賞」で褒章するでもいいではないか。いくらでも考えられることである。これはぜひ実践していただきたい。

スムースな世代交替に役立つ

 後継者へのバトンタッチが中小企業での一つの問題であることは常に報道されている。これまでに幾度もISO9001はトップダウンで進めて行くシステムだと説明してきた。この特徴を上手に運用すれば、スムースな世代交替に役立つとするのがこの一文であるが、やや強引な理屈とも自分自身で思えるところがあるので、もし反論があればお聞かせください。

 経営者が交替するときには、どうしても社員の間で今までの仕事がどう変化するのかが最大の関心事となる。この懸念は、私自身が上司が交替する度に実際に体験してきたことなので、まず間違いないと思う。とすると、従業員の不安をすこしでも少なくする手段を考えなくてはならないことになる。そこでISO9001のシステムが導入されていれば、会社の業務の大きな流れと肝心なところは文書化されているので、仕事の仕方は少なくとも大きな変化は無いと暗黙のシグナルを従業員に伝えられる。しかも、ISO9001の導入により経営者のリーダーシップを社員の前で明確に発揮しなければならない場面が多くなり、そのような機会に品質マネジメントシステムは変わらないと説明することにより従業員の不安を少しでも和らげることができるのではないかと思っている。本当にそうなのかは実際に体験したことがないので、自信はない。このような利用はあまり推薦できないことだとは述べておきたい