
認証取得には品質マニュアルをはじめ種々の文書を作ることを避けることはできない。特に、品質マニュアルの作成はある程度のコツやテクニックが必要ではあるが、必ずしも難しいことではない。国際規格には品質マニュアル作成のためのガイドライン(ISO10013)がある。以下、その概要を示す。結論を先に述べるならば、品質マニュアルは国際規格ISO9001の要求事項に沿って記述を行えばよいだけである。その他の文書類は現在使用しているものを整理もしくは修正し、そのまま使用すればよい。
1. 品質マニュアルの文書化
品質マネジメントシステムを構築する際に必要となる文書は、次のようなレベルに区別できる。
レベルA 品質マニュアル
レベルB 品質手順書(文書管理規定、内部監査規定、不適合製品管理規定など) レベルC 詳細な品質文書類(作業指図書、検査指示書、QC工程表など)
2. 品質マニュアルには次のような事柄を目的に作られる。よって、このような目的に沿うように文章を作成すればよいことになる。
a) 品質方針と品質システムを記述する。
b) 方針とシステムを定義した文書である。
c) 品質システムを実行するためのガイドラインを提供する。
d) 品質システムの要求事項を記述する。
e) 品質システムの要求事項をいかに充たすのかを説明する。
f) 使用される品質システム規格を明らかにする。
g) 品質システムでの実行する業務と活動を管理する。
h) 社員に対して品質システムの要求事項について教育する。
i) 品質システムはすべての要求事項を充たしていることを明示する。
3. 品質マニュアルの構成
品質マニュアルは、その目的を充たすならば企業の望むいかなる手法で構成されて いてもよい。その上で、品質マニュアルの各セクションとISO規格との対比表を作る。または、品質マニュアルと使用者に助けとなる関連するマニュアル、方針、手順、規格、書式、発行物、もしくはその他の文書との対比表を作る。
4. 品質マニュアル作成チーム
品質マニュアル作成の責任を一つのチームに任命する。
5. 品質マニュアルの作成
品質マニュアルには、
a) 表題と目次があること。
b) 品質マニュアルの適用範囲を限定すること。
c) 品質マニュアルの概要を提供すること。
d) 企業の組織を提示すること。
e) 品質方針を明示すること。
f) 品質目標をリストすること。
g) 組織上の構成を記述すること。
h) 特殊な方法で使われている言語を明らかにすること。
i) 品質マニュアルで作り上げられているエレメントを記述すること。
j) 特別な事項を見いだすことができるように見出しを付けること。
k) 品質手順書を明記する、あるいはそれがどこにあるかを特記すること。
6. 品質マニュアルの序文
品質マニュアルの全体像を示すための序文が作られていることが望まれる。
7. 組織とその構成、品質方針と品質目標を明記する。
8. 品質手順書の作成
品質マニュアルに手順書(xx管理規定に相当する内容)を含めるか、もしくはそれらの参照先(xx管理規定)を明らかにする。いずれであっても、手順書は、同じかよく似た構成と書式であるべきであろう。
9. 作業指示書(指図書)の作成
品質手順書は、作業指示書とは区別されるべきであろう。手順書はその性格上広く使われるが、作業指示書は通常より詳細であり技術的な性格が強い。作業指示書には、 品質マニュアルに含まれるべきでなく、別途作業に適した様式を用いる。
10. 品質システムのエレメントの記述
品質マニュアルの大部分は、品質システムのエレメント(国際規格の要求事項)を記述するべきであろう。
11. 品質マニュアルのレビューと承認
品質マニュアルの最終版は、以下のような人によって注意深くレビューされ、承認されるべきである。
a) エキスパート:内容が正確であり完全であることを確かめるために必要となる知識と経験を有する人。
b) ユーザー:品質マニュアルを日常的に使用しなければならない人で、そして品質マニュアルが実際に使用できるかどうかを決定できる人。
c) マネジャー:品質マニュアルの実行に責任を有する人で、そしてその使用を正式に承諾しなければならない人。
12. 品質マニュアルの配布・管理のための手法
品質マニュアルの管理されたコピーをいかに管理するかの方法を策定する。
13. 品質マニュアルの変更管理
変更を開始する、作成する、ラベルを付ける、承認する、配布する、統合することをいかに行うかを決める。また、従業員がどのように変更を知ることができるかを決める。旧版をいかに扱うかも決まる。
備考2にあるように、文書をどの程度にするかは企業自体が決めればよいことであり、日常の業務に支障が生じない程度であれば十分である。特に、中小企業の場合、熟練工が行う作業などには文書を必要としないい。口頭で済ますことも多々あろう。それはそれで十分である。品質マニュアルに文言を付け加えれば済むことである。「熟練工の場合には、口頭で作業指示を行う場合がある。」
備考3にあるように、文書化は、いかなる様式、あるいはいかなるタイプの媒体であってもよいとされているので、検査で使う現物サンプルも文書の一種である。このように現実に行っている作業をこと細かに文書化しなくとも実用的な文言で手順書を作ることができることに十分に留意することである。
