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4.2 文書化に関する要求事項

人とひとが直接向かいあって話しをすることが、情報を交換する方法として最も効果的であることはどこの国でも同じである。しかし、話し合いの結果を文書にして確認したり、記録として残すということに関しては日本人の不得手とするところであることは、多くのひとが納得している。だから、ここでの文書管理を読むととても歯がたたないとISO9000の取得をなかば諦める人がいるやに聞いている。それは早合点である。このガイドラインを良く理解してからでも遅くないと思う。

当然のことながら、ISO9000の要求に関係する全ての文書やデ-タを管理するための手順を作成する必要はある。しかし、改訂や文書管理のために複雑な仕組みを作り上げるとこはできるだけ避けるように示唆している。さらに、できるだけ単純で、しかも実用性の高い文書管理の方法を採用して、お役所仕事になったり、コスト高にならないようにと注意を促している。
ではどうしたらよいのかであるが、まず品質マニュアルや手順書は中小企業では原本の一部のみを作成することである。業務規模の小さい会社では現場と事務所との距離も少なく、社員同士のコミュニケーションも簡単に出来るのだから、一つの文書を共用し、不要な写しを増やす必要はない。たったこれだけで文書の改訂による複雑な管理を単純化できる。手順書の1ページが改訂され、改訂版を各部署に配布し、各部署の担当者がいちいちページを差し替える作業がいかに無駄な作業であるかは、体験すればすぐ分かることである。しかも、差し替えをしていない社員のマニュアルが監査で見つかり、不適合となることもあった。最も単純な文書管理は文書そのものを最小にすることに尽きる。
ガイドラインは、文書管理の仕組みにコンピュータを利用して、最新版が常に使われるようにすることも示唆している。たしかに、コンピュータ利用は文書を書き換えたり保存するには強力な道具である。しかし、これが逆の結果になったりすることがある。たとえば、コンピュータ上で作業指示書が改訂されたことを関係者に伝えることが不十分で、改訂前の作業指示書のハードコピーを使ってそのまま製造が進められしまうという経験もしている。したがって、生産管理を含めたLANによる完全な情報管理をしていない小規模の業務には不必要と考える。

「中小企業へのガイドライン」で指摘していることを簡単に整理しておこう。

まず、「文書」と「記録」の違いを明確しなくてはならないとしている。文書とは、業務をどのように行うかを書き下ろし、それを業務管理に使用するものであり、図面、手順書、指示書などの内部文書や法的規制、規格、仕様書などの外部文書が含まれるとしている。一方、記録は、なんらかの活動の結果として生成されたものであり、その時点で存在した事実を述べたもので、改訂することは出来ないとしている。

文書は、どんなものでも発行される前に内容が使用目的に適しているかどうか、だれか適切な人によって確認され、承認されねばならいとしている。小規模の企業ならば社長でもよいが、その下の、権限が委譲された管理者でも良しとしている。

文書管理には、廃止された文書は破棄することが要求されているが、法律上の理由や参考資料として保存していなくてはならないものは、当然のことだが、ISO9000の管理文書とは別に保存することは出来るとしている。

規格では、データについても言及しているが、ここでのデータとは、常識で理解できる製品名や顧客リスト以外に在庫情報も含まれるので注意したい。これら管理可能なデータは、更新、改訂、再発行できるが、管理不可能なデータ、すなわち記録は改訂出来ない。たとえば、ある日の出荷数量はデータであり、変更できないとしている。ただし、誤って記入した数量は訂正できるのは当然であるが、訂正者の名前と日付を訂正箇所に記入することが求められる。このような訂正方法は、検査結果にも当てはまる。
 
以下に、小規模企業で採用された文書管理規定の事例を示す。ただし、このような規定を別途作成せず品質マニュアルに含めることを推奨する。
 

 表題     文書管理規定                          発行日   1997-10-1  

                                                                         改訂日      2008.4.13

                           
 1. 目的  
 本規定の目的は、文書およびデ-タ管理の手順を明らかにすることである。  
   
 2. 責任  
 文書管理手順の制定・維持の責任は専務にある。また、文書の管理責任は総 
 務課長にある。  
   
 3. 文書の定義  
 文書とは、仕事の指示をするための書類である。記録とは厳密に区別する。 
 したがって、文書には変更・改訂がありうる。一方、記録には変更・改訂は 
 ありえない。  
   
 4. 文書の体系  
 当社では文書化されたマネジメントシステムとして品質マニュアルがあり、 
 これを第1階層文書とする。  
 第2階層文書は、マネジメントシステムの構成要素ごとに、活動の手順を記  
 述した文書である。第2階層文書名は、~規定とする。  
 第3階層文書は、さまざまな形式の文書があるが、実務担当者に具体的指示  
 を与えるための文書で、制作指示書がその代表例である。この第3階層文書  
 名は業務の便利性などを考慮し、担当部署で決定する。制作指示書の管理に 
 関しは「制作指示書管理規定」を別途定める。  
   
 5. 新規文書の作成  
 新規文書を作成する場合は、担当部署が内容の概要を総務課に提出し、総務 
 課が文書化する。総務課は文書管理番号台帳に登録し、文書管理番号を採番 
 して発行する。  
 新規文書を作成する場合は、原則として文書標準書式(当該規定類に同じ) 
 に従う。文書にはすべてのペ-ジに、次の各項目を必ず表示する。  
  (1)文書管理番号  
  (2)版番号  
  (3)文書名  
  (4)発行日付  
  (5)ペ-ジ(当該ペ-ジ数/全体ペ-ジ数)  
   
 6. 審査および承認  
 第1階層文書である品質マニュアルは、品質管理責任者である専務が審査し  
 、社長が承認する。  
 第2階層文書である各規定は、各担当部署の責任者が内容を審査し、品質管  
 理責任者が承認する。  
 第3階層文書は、各担当部署の責任者が内容を審査し承認する。  
   
 7. 文書改訂  
 文書改訂に伴う差し替えは、ペ-ジ単位の差し替えはせず、文書単位の差し  
 替えとする。  
 改訂時の審査および承認は、新規文書の発行時と同様の方法で行う。  
 文書の改訂履歴は、文書中に改訂履歴ペ-ジを設けて記録する。  
   
 8. 文書原本・複写の管理  
 第1階層と第2階層の文書原本は、社内で一部のみ存在し、事務所で管理され 
 る。業務に使うために複写が必要な場合は、総務課がコピ-を作成し、”管  
 理コピ-”を明記する。総務課は「文書管理台帳」にコピ-作成文書名、作成 
 先、日付を記録する。  
 文書を社内外の業務に使用せず、顧客や外部関係者への参考資料として使用 
 する場合は、複写した文書に”非管理コピ-”と赤ペンで記入する。総務課  
 は「文書管理台帳」にコピ-作成文書名、作成先、日付を記録する。  
   
 9. 文書台帳の管理  
 第1階層と第2階層の文書を記載した「文書管理台帳」を作成し、総務課が維 
 持管理する。文書台帳には最新版を表示する。新規および廃止文書を明確に 
 表示する。  
   
 10. 文書の配布  
 第1階層と第2階層の文書は原本のみを作成し、配布しない。一方、制作伝票 
 のような第3階層の文書は担当部署に業務の必要に応じて配布するが、配布  
 の記録は求められない。  
   
 11. 旧版の廃棄  
 文書が改訂された場合には、旧版を廃棄し新版と差し替える。文書台帳に廃 
 棄を表示し、新版を記入する。  
   
 12. 文書の保管  
 文書は、総務課で適切な保管場所を定め原則として3年間保管する。旧版文 
 書、廃止文書で、保管の必要なものは、総務課で保管期限を3年とし、現行 
 文書とは別に保管場所を定め、識別し保管する。  
   
 13. 廃棄  
 保管期間を経過した文書は、専務の決裁を経て廃棄処分する。機密文書につ 
 いては裁断または焼却する。