10 学習、改善および改革
10.1 一般
組織は、持続可能性を達成するために事業環境の変化に適用できなくてはならない。したがって、いつそのような変化が起きているのかを察知できる能力を持つ必要がある。しかも、その変化に反応して改革する能力も保持することが求められる。その反応は、過去に学習したことをよりどころにしていなければならない。あるいは、他社が同じような状況においていかに対応したかによってどう対応するかを決めなければならない。
持続可能性は企業に学習する能力を要求する。進歩的な学習能力を有する組織では、組織の人々から得られた知識を高度にそして効果的に利用することができ、核心となる能力を高め、継続的改善と改革を促進できる。
組織は、持続可能性達成に向けての追加的なルートとして、有効性と運用効率を向上するために改革を行使しなければならない。
10.2 学習
10.2.1 学習のタイプ
組織は、持続可能性に影響を与えるかもしれない動向と変化に対する認識を持ち続けるために学習の重要性を理解しなければならない。持続可能性ための必要な能力を獲得するためでもある。
持続可能性は以下の二つの面で学習能力を必要とする。
a)組織の学習能力、すなわち、事業環境面での出来事を含め、外部の出来事から情報を収集し、分析し、洞察する組織の能力
b)個々人の能力と組織の能力を融合させる能力、すなわち、組織の人々の知識と思考・行動パターンを組織の価値創造システムへ融合させる能力
10.2.2 学習の情報源
組織は、学習の基礎として利用できる内外の情報源を見つけ出し、利用しなければならない。
内部的には、学習は経験、組織内の部門横断的な知識および情報の共有することに基づくことになる。次のような事柄である。
・外部のパートナーとのネットワーク
・組織の内部でベストな実施事案
・問題、失敗およびニヤミス
・組織の内部での行動・思考パターン
外部の情報源には、以下のようなものが含まれる。
・顧客ニーズの変化に関連して市場の変化
・すべての関連分野でのトレンド
・成功している企業に対応したベンチマーキング
・政治的な変化
・技術的な変な
・総合大学およびその他の教育機関
・専門家とコンサルタント
10.2.3 学習効果に影響する要因
経営者は、人々の自主性に基づいた組織が学習を促進するようにようにしなければならないし、学習する組織の文化をはぐくむようにしなければならない。
効果的に学習するためには、組織は以下の重要な点を考慮し、適切に行動しなければならない。
・経営者が率先して学習し、リーダーシップを示すこと
・知識のネットワーク、連結性、相互作用、および共有を激励すること
・コミュニケーションの効率的なチャンネルを構築すること
・人々の能力を尊重し、能力の向上を支援すること
・創造性を認識し、異類混交を容認し、失敗に寛容になること
・明確な成果を認知し表彰すること
・学習のために利用可能な公開されたシステムを準備すること
・内外の情報源からの研修を受け入れる準備をしておくこと
・組織の内外でアイデア、知識および経験を交換する機会を人々に提供すること
・内外を源にする情報と知識の効果的に利用すること
・批判にも寛大になること
・学習する組織としての文化を育てるために、経営者は、組織が個人の能力・知識を組織の能力・知識に融合させることを促進するようにしなければならない。
経営者は、組織が学習の結果を最大化し、最高に活用することを促進するようにしなければならない。
10.2.4 学習プロセスの計画
組織は、以下の事項を考慮した学習のためのプロセスを確立するべきである。
・顧客とその他の利害関係者のニーズ、およびこれらのニーズの変化
・利害関係者のニーズを満たすために必要な技術的能力の面での変化
・競争環境での変化および競争優位性に影響する要因
・種々の情報の収集と分析能力
・必要な能力の獲得
大学の新卒者を獲得するために日本企業は、多大な努力をしていることがいろいろなメディアで報道されている。団塊世代の定年やリストラによる社員不足が主な原因のようだ。人のアイデア、知識および経験によって企業は成り立っているのだから、必要な能力を持った社員を獲得することは持続可能性を目指すなら不可欠のことである。せっかく獲得できた人材も企業で学習できないと感じたならば、他社への就職を考える。社員教育にいくらの予算を組み、一人あたりの金額が競争他社のそれより少なければ、競争力はいずれ失われる。このような分析が望まれる。
10.3 改善
組織の改善活動は、製品の改善につとめることと同時に利害関係者の満足を向上させるために必要なプロセスに焦点を合わせるべきである。
組織は、製品、プロセスおよび経営システムの改善に関する目標を明確にすべきである。また、それらを継続的にかつ体系的に改善することを探求すべきである。
経営者は、以下の事柄を通じて継続的改善が組織の文化の一部として樹立しているようにしなければならない。
・効果的な改善に参画できる機会の提供
・認知と表彰
・小集団活動
10.4 改革
10.4.1 一般
改革は、持続可能性にとって不可欠であり、組織の学習能力に基づく必要がある。組織は、将来の成功に必要な組織の構成要素や能力の改革を推進しなければならない。改革は、組織の現行の枠組みを除去し新しいフレームワークを構築する全体改革もしくは部分改革を意味することがある。これには学習を通じて得られる賢明さを必要とするだろう。
10.4.2 改革のタイプ
経営者は、組織を取り巻く環境に重大な変化の対応には、持続可能性を目指すならば、既存の仕組みの改善では不十分で全く新しい発想に基づく改革を必要とすることを理解しなければならない。改革は、必要とあらばいつでも実現されることが可能でなければならない。
改革には、以下の事柄が含まれる。
a)技術もしくは製品の改革、すなわち、事業環境と製品のライフサイクルでの変化に対応した改革
b)ビジネスモデルの改革、すなわち、ビジネス環境に変化があった場合に、競争優位性を維持し、新規のビジネス機会が実現されるようにする改革
c)組織の改革、すなわち、ビジネス環境の変化に対応した組織の構成要素の改革 d)プロセスの改革、すなわち、製品実現のための手段の改革
組織内での改革のプロセスの設計、実施および運営は、企業各自のニーズ、特定の目的、生産されている製品、利用されているプロセス、規模および構成により影響を受ける。
10.4.3 改革の効果に影響する要因
組織による改革は、企業各自のニーズ、特定の目的、生産されている製品、利用されているプロセス、規模および構成により影響を受ける。
組織は、持続可能性の機会を見極める上で以下の要因を考慮すべきである。
・変化の予兆の検知
・現実の正確な理解
・改革に対する経営者のコミットメント
・現状を変え挑戦する気概
・変革の阻害要因の特定
・知識と経験の内部での交換、さらに、組織外のパートナー・供給者との交換
10.4.4 改革プロセスの計画
持続可能性を達成するために、組織は以下を考慮すること。
・プロセスもしくは製品が陳腐化し、それにより危機に陥る可能性
・顧客のニーズと期待を満たし、利害関係者に新しい価値を創造するためにプロセスもしくは製品を改革する必要性
・新しい顧客ニーズを特定もしくは創造する可能性、これにより新規の市場を創出する
組織は、改革の計画時には以下の要因を活用するべきである。
・持続可能性目指す戦略レビューからの結果
・品質マネジメント・システムを改善するための活動結果
・ビジネス戦略の見直しからの結果
・組織の業績(市場占有率、販売高、利益、格付け)
・自己評価の結果
・目標の確認と優先順位づけ
・技能や知識、経営資源の入手可能性、改革に利用できる組織内の現存する機能のような要因に関する内部環境の状況
・科学的、もしくは技術的情報の入手のようなことに対する配慮に関する外部状況
・改革の手法の入手可能性
・予期されるメリットとリスク要因
学習能力に基づく改革は、持続可能性に不可欠である。持続可能性は、組織がビジネス環境の変化を検知し、自社の主要な能力を理解し、必要に応じてその能力と組織構成要因に変革を行う場合にのみ可能となる。
偶然だがこの記事を書き終わった日、2008年2月19日に東芝がHD-DVD事業からの撤退を表明した。西田社長は、「事業経営は状況の関数であり、変化には機敏に対応していくべきだ」と記者会見で強調した。また、「次世代映像事業の中長期的な戦略を再構築する。(新工場を建設する半導体メモリーなどの)技術を融合し、新たなビジョンをつくりたい」とも述べている。ISO9004:2008の「持続可能性に向けての事業経営」は、絵空事でなく、理想を求めているのだけでもない。現実に、規格で提唱されている事業経営と全く同じことを東芝は実行したのだ。
