2008 年 4 月 1日(?) - アメリカ発
つい最近のことだが、ISO TC 176委員会は、ISO9001の修正でよいという気運が高まり、二番目のCDは必要なく、新しい規格の発行は2008年5月から10月に繰り上げられると発表した。この発表により、修正の内容の多寡に加えて、ISO9001の認証取得者のコミュニティで多くの会話が始められた。ウォータークラーの周りで耳にした会話は次のようだった。
「規格のドラフト作成者はどうしてもっと変えないの?」
「変更がこんなに少ないなら、どうしていま発行しないのよ」
このような疑問への答えは、ISO Guide 72にまとめて決められている。個々のマネジメントシステム規格がスタートし、発展し、維持されることを目的に作らられたのがこのガイドラインである。ISO技術委員会が必ず従わなくてはならないものすごく特殊なルールが決められている。それには、それぞれの規格は、5年ごとに見直されなくてはならないことも含まれている。
ISO9001の場合、それは2004年だった。この強制的な5年見直しの間、TC176委員会は必要な市場調査と正当性に関する調査を行った。これらの調査の一部として、規格は現状維持か、修正するか、改正するかを確認するために参加国による投票が行われた。いまの規格を追認する投票もあったが、大多数はISO9001を修正することに投票した。
修正と決定された時に、規格のドラフト作成者たちはちょっと変わった問題にぶつかった。ISO指導者たちは、修正と改訂との違いを区別しなかったのだ。規格の使用者たちの望みを充たすために、規格作成者たちは、ある種のリスクアセスメントマトリックス調査を実行した。規格を変更すればある程度の影響が生じるのは見えているが、それが変更による便益を引き下げることのないように慎重にならざるを得なかった。彼らは、さらに気を使ったのは、規格の変更が理解されやすいことだけでなく、誤解を招くこことにならないことだった。これらの制限事項が今回の修正に多くの影響を与えた。
また、ISO指導者たちは、TC 176委員会に制限を加えた。いったん規格の修正の中身が決まったならばそれが最後でおしまいになるようにせよということだった。ISO指導者たちは、国際規格ドラフト(CD)および最終案(FDIS)に対して提出されることなっているコメントの収集時間が長くならないように指令した。さらに、彼らは、これらのコメントはフランス語とドイツ語の公式言語に翻訳するように要求した。参加国からのコメントはもちろん英語で提出するように求めた。
ほとんどの場合、修正は改訂よりも変更する中身がすくないので、求められた言語へ文書を翻訳する時間は少ないと考えられる。また、規格の利用者がコメントを提出するにもあまり時間は必要ないと思われるかもしれない。しかしながら、ISO指導者たちはどちらのシナリオにも救いを与えてくなかった。
2007年7月、TC 176委員会は予定されたスケジュールで決められていた一つのステージで作成されるはずの第二ドラフト(CD2)を省略することを決定した。そこで、国際規格ドラフト(DIS)の作成に一気に直行した。
時は2008年を目の前にしていた。どうして今回の修正でもっと多くの変更をしなかったのかと2000年版の改訂で長いながい移行時間を体験してきた組織は驚きをもって受け止めた。さらに、そんなに少ない変更だけならばなぜ今すぐに規格を発刊しないのかと不思議に思っている。現行の国際規格ISO9001:2000を2005年ではなく今ごろに見直しを行っていることは規格改訂に対してのTC 176委員会の慣性が鈍くなっているのではないかどうかは難しくてはっきりわからない。付け加えるならば、もし規格の利用者たちが修正後の規格内容を知ったならば、TC 176委員会に対する彼らの見方が変わるのだろうか?余りにも少ない修正なので長い時間をかけながらこんなことしかできないのかと言うこと。今後規格をどのように修正や改正を行うかについて規格利用者である我々が規格内容に影響を及ぼすことができる可能性はあるのだろうか?
修正が発刊されたのちには、規格利用者たちは聞き取り調査に参加したり、修正が好ましい内容かどうかについてフィードバックをする必要がある。このフィードバックを受け取らなければ、修正された規格文言が受け入れられるものであり、変更せず残された文言が当然だと思われるかどうかわからない。
我々は、ISO Guide 72に基づいたシナリオの真っただ中にいるが、このような事実は残る。このガイドラインは、規格の高潔さを残すために存在し、そのベネフィットは多くの部分で短所を上回っていることだ。ただ、疑問は残る。このガイドライン文書は、今回のISO9001:2008の改訂で見られたようなペースで作業を進めて行く上でTC 176委員会の今後の活動に影響を及ぼすのかどうか?どうなるかをいま言うことは難しかろう。しかし、言えることは、以前から受け取って来た規格利用者からのフィードバックを受け入れながら規格を作るということにはならないだろう。
著者紹介:13年以上ある企業で品質マネジメントシステムの実践に取り組んできたLorri M.Hunt氏。彼女は、米国のTC 176技術委員会の委員でもある。現在、ISO9001/4:2008策定に重要な役割を担っている。